石臼研究所キョウラク

写真:36型電動石臼

そばの味を左右する石臼についてのメモ

石臼は研究すればするほど疑問が湧いてきます。少しずつ解明できました。
以下のメモは、蕎楽が数々の実験によって得たことを、メモとして編集しています。
著書を参考にしたり、他人の意 見を掲載したりしていません。
もしかすると間違っている部分もあると思いますが、これから石臼の研究をする方の参考になれば幸いです。

そば用石臼の概要

日本のおおよその石臼の目の溝には、主溝と副溝があります。臼の目は蕎麦の実やそば粉を外側への送り出し機構です。 一般的に反時計方向に上臼を回します。臼の目のパターンは6分画や8分画が多く見受けられます。
私が最初に購入した石臼は、下臼の部分は中心部分が盛り上がって凸形になって、上臼は中心部が凹形になっていました。
上臼と下臼を重ね合わせると、外周で密着し中心部へ向かって上臼と下臼の隙間(この隙間のことをフクミといいます)があります。
蕎麦の実の投入口(ものくばり)のところで普通の石臼で2~5mmくらいの隙間があります。
現在の蕎楽の石臼は石の材質や目立ての方法を改良し、蕎楽独自の石臼に変えて使用しています。
臼の回転数は1分間に10~20回転でゆっくりとしたスピードで製粉します。

写真:36型電動石臼

下臼の面が凸面になっているのは意味が無い

いろいろな石臼を目立てしましたが、ほとんどの石臼は下臼の面が凸面になって傾斜をつけています。
私が製作している石臼は下臼は完全な平面にしあります。下臼を平面にしたほうが上臼とのバランスをとりやすいからです。
豆腐用の石臼をつくるときは、水に浸した大豆をすり潰すので、
傾斜をつけないと水分が臼に溜まってしまい支障をきたしますので傾斜をつけますが、 そば粉は傾斜をつけなくても外へ排出されます

石臼で碾いた粉は本当に美味しいのか?

私は石臼の目立ての違いでそばの味との関わり合いを実験しました。 石臼の目のパターン、溝の広さ、深さ、形状、石面のざらつき等で粉の質が変わってきます。 茹で上がったそばを食べたときにハッキリと味,食感,香りが違います。 石臼の目のパターンや目立ての方法によって、味に違いがでてきます。
したがって、石臼で碾いた蕎麦を食べても美味しいのと美味しくないことがあります
石臼の材質・目立ての仕方・臼の大きさ・重量・碾き方等で蕎麦粉は化けてしまいます。

石臼の材質について

石臼は花崗岩(御影石)や安山岩が一般に使われています。
そば粉を碾く石の条件は、硬くて、摩擦係数の大きく、粘りがあれば最高だと思います。
でも、その条件に合う石材は探しあてるのが難しいと思います。
色々な石材で石臼を作って試してみましたが、安山岩(澄川石)で上記の条件に合う石に出合いました。
平成15年から蕎楽はその石臼を愛用しています。
平成20年から上記の澄川石とは違う石を見つけました。羽黒青糠目石という名の石です。この石は花崗岩(御影石)でありながら、澄川石の性質に近い性質をもっています。
現在は澄川石と羽黒青糠目石を主に採用しています。詳細は別項で説明します。
そば屋を開店当初の安山岩の石臼は、目立てをすれば良質の粉は碾けたのですが、目立ての良い状態が長続きせず小まめに目立てを繰り返していました。
現在使用している石臼は、良い状態が長続きします。
最近まで硬い材質の石は、石臼を作る職人さんから敬遠されていました。
石工道具の発達と共に硬い石を加工しやすくなりました。今後は硬くて、摩擦係数が大きく、粘りのある材質の石臼が多く出回ると思います。

何事にもこだわる

写真:手碾き石臼(普及型)

石臼にのめり込む)

私は前職の関係上、開店後間もなく製粉用の機械に興味を持ち、自分の使いやすいように機械を改良して効率よく使用していました。 一番興味を持ったのは石臼です。 ほんの少し目立てし直しをしただけでもそばの味がガラッと変わってしまいます。 これには驚きました。 目立てのやり方によって、そばが旨くなったり不味くなったり、ひどい時には店を開けない日が何回もありました。 何回も目立てを繰り返すうちに、すっかり石臼の虜になってしまいました。 平成16年(2004年)の夏、ついに電動石臼を製作し完成させてしまいました。 この1号機は完成を待ち望んでいた東京都青梅市の榎戸さんというお蕎麦屋さんに完成と同時に納品させていただきました。

写真:石臼拡大

石の材質

石臼で一番大事なものは石そのものです。 どんなに良い目立てをしても石が悪ければ質の良い粉は碾けません。 今までに何度も何度も目立てを繰り返し、自分の気に入った粉が碾けても、良い期間は長持ちせず一週間しか持ちませんでした。 私の目立てた石臼は鋭いエッジが立っています。 石自体に含まれている刃物のような成分(例えば石英や雲母など)が規則正しく配分された硬めの安山岩が、そばに対して極力ストレスを与えないでやさしく碾けるので、私は好んでそういう石を使っています。 私が理想としている石は、硬くて粘りがあってしかも摩擦係数の高いものです。でも三拍子そろった石はなかなか見つかりません。 平成20年から新しい石材を、蕎楽の石臼のに加えました。羽黒青糠目石という名の石材です。 従来の石臼は、少しやわらかめの安山岩を使っているのが多く見受けられます。 昔は石臼の道具はタガネを使用していました。硬い石では刃物の先が直ぐに丸まってしまい使い物にならないので、少し気泡の入った少し軟らかめの安山岩を使用していました。 この石の特徴は石が磨り減ってもツルツルにならず、目立てした時と同じような(厳密には違いがあります)ザラザラがあり、手碾き用として使用するには手ごろな石臼だと思います。の花崗岩(御影石)で一番新しく、6000万年前に誕生した 岩石だそうです。
羽茨城県桜川市北部、筑波連山北端に位置する羽黒地区より産出されます。
南に真壁石、東に稲田石が採掘されます。

写真:上臼

目立てとフクミ

石臼で二番目に大事なものは目立てです。 よく使う道具はタタキ(両刃とも言う)とビシャンとディスクグラインダーがあれば、大抵の石臼は目立てができます。 しかし石臼の微調整となると勘を頼りにするしかなく、思うような粉がなかなか碾けません。笹目を立てても、決して良い粉が挽けるとは限らないです。 そこで蕎楽では石臼研磨機というものを発案し、私の同級生の機械屋さんに設計していただき、研磨機を製作していただきました。 この研磨機というものは、石臼の同心円上の高さを一定(石臼製作の基本)にするもので、なかなかの優れものです。